「自分がいなくなったら、この子はどうなるのか」。障害のあるお子さんを持つ親御さんなら、誰もが一度は眠れない夜に考えたことのある問いだと思います。この記事では、感情論ではなく実務として、「親亡き後」に備えて今からできる準備を5つに整理します。

親亡き後問題の本質は「住まい・お金・意思決定」の3つ

親御さんが日々担っている役割を分解すると、①住まいと生活の世話、②お金の管理、③本人に代わる判断や手続き、の3つに集約されます。親亡き後問題とは、この3つの引き継ぎ先を生前に決めておくことに他なりません。

準備1:住まいの確立 — 最優先はこれ

3つの中で最も時間がかかり、かつ本人への影響が大きいのが住まいです。親が亡くなってから慌てて施設を探すと、本人は「親との死別」と「環境の激変」を同時に経験することになります。

親が元気なうちにグループホーム等での生活を軌道に乗せておくことが、最大の備えです。体験利用から始めて数年かけて移行すれば、本人は「実家にも帰れる第二の家」として無理なく受け入れられます。親御さんにとっても、「自分の目で新しい暮らしを確認できる」ことは、何よりの安心材料になるはずです。

準備2:お金の設計 — 実は「大金を残す」必要はない

「いくら残せばいいのか」という質問に対する実務的な答えは、住まいと支援体制が確立していれば、月々の収支は本人の年金で概ね回る、です。障害基礎年金+家賃補助+工賃で、グループホームの費用(月6〜9万円)はまかなえるケースが多いのです。

残すお金は「月々の生活費」ではなく、「入院・引越し・耐久消費財などの臨時支出への備え」と考えると、必要額の見え方が変わります。まとまった財産を残す場合は、本人が管理できない・悪意ある第三者に狙われるリスクがあるため、次の制度とセットで考えます。

  • 障害者扶養共済(しょうがい共済):親が掛金を払い、親の死後に本人へ終身年金(1口月2万円)が支払われる公的制度。掛金は所得控除対象
  • 特定贈与信託:信託銀行に財産を信託し、本人に定期的に給付。6,000万円まで贈与税非課税
  • 遺言:きょうだいとの遺産分割で本人の取り分を明確にしておく

準備3:意思決定の引き継ぎ — 成年後見と「チーム」

親が担ってきた契約・手続き・財産管理は、成年後見制度(後見・保佐・補助)で法的に引き継げます。ただし後見人がすべてを担うのではなく、実際には相談支援専門員・グループホーム・後見人・きょうだいがチームで本人を支える形になります。親が元気なうちにこのチームの原型(特に相談支援専門員との関係)を作っておくことが重要です。

準備4:きょうだいへの配慮

「きょうだいに迷惑をかけたくない」という思いは多くの親御さんに共通します。ここでも住まいの確立が効きます。生活支援の主体がグループホームにあれば、きょうだいの役割は「たまに顔を見る」「重要な決定のときに関わる」程度で済み、人生を縛りません。きょうだいには早めに方針を共有し、「何をお願いし、何をお願いしないか」を言葉にしておきましょう。

準備5:本人の「暮らしの記録」を残す

服薬情報、こだわり、好きなもの、パニックのきっかけと対処、既往歴——親御さんの頭の中にある膨大な情報を、支援者が引き継げる形で文書にしておきます(サポートブック・親心の記録などの様式が市販・配布されています)。これは今すぐ、費用ゼロで始められる準備です。

始める順番

  1. 相談支援専門員とつながる(まだなら市の障害福祉課へ)
  2. グループホームの見学・体験(本記事の準備1)
  3. 暮らしの記録の作成(準備5)
  4. お金の設計・後見の検討(準備2・3)は情報収集から

**柏市のグループホーム「ぶしぞうの家」では、「親亡き後に備えたい」というご相談を数多くお受けしています。**10年先を見据えた体験利用のご相談も歓迎です。まずはご家族だけで、見学にいらしてください。